今回はコウモリの保護調査を通じ、環境を守っていく一つの手段を学んだ。この体験をどう学校現場に生かしていくかということに関して大切なことは、この調査の意義、目的をいかに理解し、学校の日々の活動にどう応用していくかである。つまり、学校現場にそのままこのコウモリ保護調査のノウハウを導入するのではなく、どうしてコウモリの保護調査が環境を守ることにつながっていくのか、またこれをすることによって何が変わるのかという意義、目的を学校での学習活動に取り入れていく必要がある。
例えば、総合的な学習において身近な自然を調べる体験活動がよくある。多くは、身の回りの環境のことをよく知り、そして守っていこうとする心を育てることをねらっている。確かに子どもたちは楽しんで身の回りにある植物や動物等を調べ、新たな発見をし、自分たちのまわりの自然を大切にしようとそのときは思う。しかし、長続きしないことが多い(実際、自分自身もそのような実践を行ってきたように思う)。それは子供たちにとって具体的な数値や形に残らないものを大切にしようといってもなかなか実感がわかないからである。はっきり言えば、口先だけの環境教育になりかねない。戦後教育において「這い回る経験主義」といわれた時代があった。まさにこれの繰り返しとなってしまう。こうならないためにも、今回アースウォッチでの体験が生かされる。すなわち、専門家が行う調査活動を学習活動の中に埋め込んでいくのである。データをきちんととり、その結果、子供たちにとって目に見える形で残り、学校での学習を終えたとしても引き続き子供たちの主体性のもと続けられる可能性を秘めている。身の回りの自然の様子でも、どんな動物や植物がいつどれくらい見られるのか、その数がもし減っているとするならばその原因をしっかり探るであろう。さらにその原因の解明について真剣に取り組むことになる。子供たちにとって本物の学習へとつながっていくと思う。
コウモリの保護調査のノウハウは導入するのではないと前述したが、今回学んだ具体的な科学的な観察方法の中でも直接授業へと取り組めるものもある。例えばhabitat
mappingがある。これはコウモリが棲む森の植生を調べるために使った手法であるが、身近な地域の環境を知る方法として活用できる。子供たちも様々な調査を行うが、あいまいな調査ではなく、専門家がきちんと考え、実行している調査を活用することが必要である。このことはそれらの調査が環境を守ることとどうつながっていくかということをしっかりと子供たちが認識させることができる。
ところで、今回の体験では、自らが専門家による保護調査の体験をし、その体験を教育にどう生かしていくかということが課題であった。まさに教師自らが総合的な学習を行ったことになる。体験をこんなことしました、こんなことがおもしろかった、こんなことを発見しましたという体験を語るだけに終わらせるのではなく、この体験をいかに学校現場へ返すことができるかということを考えなければならない。これはとても難しい。このことを子供たちに置き換えると、学校現場において、子供たちに様々な体験をさせ、それを子供たち自らが学びへと発展させていくということは、子供たちにとって本当に難しいことだと実感した。すなわち、体験を加工化する、これはまさに単純な作業ではなく、子供たち自身が真剣に悩み、苦しみ、生み出されていくものであって、またそのようにしなくては学びとなってこない。このことに今回の体験は気づかせてくれた。
さて、この体験をいかに加工するか。上記のような意義、目的をしっかりと理解した教育を行うことと、さらに教師自らが行ったこの体験を子供たちに語るということも必要であると考える。過酷な体験をしたことをおもしろおかしく、時には真剣に子供たちに話すことも大切である。教師自身の正直な思いを子供たちに伝えることによって、環境に関する意識は高まると思う。例えば私はこう感じた。「大自然の中で、私という存在はとてもちっぽけに見えた。人間は自然によって生かされているのだと感じた。しかし、保護調査を通じて、この自然も人間によって生かされていることに気づいた。あるとき、この自然はここまで美しい姿を保って私との出会いを待っていてくれた、と思えるようになり、この大自然はすべて私のものだ!!とさえ思えるようになってきた。そして、このことは結局、日々の作業の原動力となった。」
こういう気持ちを子供たちにも感じてほしい。学校現場で行う環境教育等により子供たちひとり一人が自然はぼく・わたしのものだという意識が芽生えれば、きっとすばらしい環境を保つことができるであろう。このことが、自然も人間も真に共生できる関係作りへの第一歩となることを願う。
要約
マレーシアのジャングルの奥地での体験は、自然と人間の共生できる関係づくりへの第一歩を踏み出したように思えました。そして世界中の仲間との出会い、人と人とのネットワークづくりの場でもありました。
語学力は、1対1では問題ないのですが、やはりネイティブ同士の会話の中になかなか入ることができませんでした。そのことに関して、私はとてもコンプレックスに感じました。しかし、それを挽回したいために、作業に関しては人一倍がんばったつもりです。しゃべれない分、行動でアピールしたということでしょうか。
いろいろな知識があれば、世界中のボランティアの人たちと会話は弾みます。ちなみに私は日本の漫画について話をし、盛り上がりました。各国のボランティアたちは、このプロジェクトに参加しようというだけあって、すでに様々な体験や多くの知識をもっています。自国のことはもちろんのこと、様々な国について語ることができます。日本のことでさえ語れる人も。やはり最後は度胸です。語学に関しても、体力に関しても恐れず前にどんどん進んでいく度胸があればなんとかなりますね。
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